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Although the world is full of suffering,
it is full of the overcoming of it.
- Helen Keller

Yukiyanagiな日々

「黒天白悪」第4章

            母なる森 その日、レオナルドは珍しく暇だった。たまたまバイトもないし、課題もレポートもなかったためだ。 こういう日は決まって彼は部屋に閉じこもっていた。閉じこもって、ギターを相手にしていた。 実は彼、ギターを弾くのが趣味なのである。また作曲もして、アルタシアに披露することがあった。かつて森に住んでいたころ、無趣味、いや木に登ることぐらいしか好きなことがなかった彼に、アルタシ...

「黒天白悪」第3章

            罠  ある日、ルイス――――本名レオナルドは、大学のレポートに必要な参考文献を探しに図書館に来ていた。理工学関連の書棚へ向かう途中、彼は怪奇小説の置かれた棚の横を通り、一冊の本に目をとめた。 タイトルは「血と涙」というものだった。表紙には顔色の悪い美男子と、あどけない顔の少女が抱き合ったイラストが描かれている。美男子の唇は、少女の首に接近している。まるで伝説の(・・・)吸血鬼のよ...

「黒天白悪」第2章

            癒えぬ傷 ひとりの男が、暗い部屋の中でパソコンの画面を睨み付けていた。 映っているのは何処かの地図。「このまま逃げ切れると思ってるのか……レオナルド」 そこへ彼の部下らしき人物が入ってきた。「準備が完了しました」「あぁ、ご苦労だった。ありがとう」 男に笑みが表れた。「これで私の過去が清算できる。あの男さえこの世から消えてくれれば、私の全ての苦しみが消え去るんだ。――――始めよう」...

「黒天白悪」第1章

            過去との別離「ギャ――――っ!!」とある満月の夜、暗がりから一人の少年が飛び出してきた。ぼろい麻布のマントを羽織ったその少年は、悲鳴に導かれて町に現れた人々から逃げていた。「出たぞ! またあの悪魔少年だ!」 人々は大きな懐中電灯を照らし、首に十字架やニンニクをぶら下げている。「また人が襲われた……これで10人目だ……」町を見下ろしている人の一人が絶望的につぶやいた。「二十一世紀世の中と...

「黒天白悪」序章

         血を吸う鬼と書いて、吸血鬼――――吸血鬼。夜な夜な墓場から出てきて、寝ている人の喉に噛み付き血を吸うと言われるこの化け物は、映画や小説、ゲーム、ドラマを通じてよく登場し、西洋の化け物の中で最もなじみ深い存在である。 この事情は「この世界」でも同じで、つい最近までその存在は「この世界」においても完全に架空の存在だと思われていた。私たちの世界に比べてはるかに多種多様な人種が存在していても...