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Although the world is full of suffering,
it is full of the overcoming of it.
- Helen Keller

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「獰猛な肉食動物」っていう表現マジいい加減にしてほしい

こういう感じのことは今までも何度か書いている気がするんですが、先週と今週の「ダーウィンが来た」で恐竜の回を見ていて改めて思うので書かせてほしいです。今回は今まで以上にはっきり言わせてほしいです。

いたいけな草食獣 VS 血に飢えた肉食獣

CGでの再現などで見られる動物たちの生態って、大抵「大人しくていたいけな草食動物を凶暴で怒り狂った肉食動物が襲う」っていう構図になっていると思いませんか? ティラノサウルスとかいつも大きく吠え声を立ててる姿で表現されてますよね。やれ羽毛があっただの集団で狩りをしてただの言う以前に、獲物に向かって威嚇したら逃げちゃうでしょと言いたい。そしていつも肉食恐竜の陰に怯え、大人しく草を食む草食恐竜たち。ティラノに襲われる瞬間はまさに悲劇そのもの。そういう演出が私は昔から大嫌いです。

よく「獰猛な肉食動物です」とか「植物を食べる大人しい性格です」とか聞きますが、肉食だからいつも怒り狂ってるのか、草食だから穏やかなのか、よく考えるとイコールになるとは思えませんよね。実際のところ肉食動物も結構怖がりだったり、草食動物も結構荒々しかったり、むしろ逆じゃないの?と思うことがしばしばあります。

どうしてそういう表現に此処まで私が腹を立てるのか、それはわかりやすさのために動物たちを間違った姿で表現しており、それがさもさもリアルであるかのように言ってくるのが許せないからです。肉食動物はほかの動物を襲って食べるから暴君のように恐ろしくした方が伝わるだろう、肉食動物に食われる草食動物は大人しくした方が対比になっていいだろうという意図なんだと思いますが、そういう思い込みのままでいいんでしょうか?

「自然ドキュメンタリー」さえもその構図を採用している

昨年「シーズンズ」という野生動物の「ネイチャードキュメンタリー」映画が放映されて私もBlu-rayで見たのですが、上記の感覚が抜けていないことが分かり、とてもがっかりでした。2万年間の人と自然とのかかわりを描くなんてどうやってやるのと思ったのですが、やはり制作側の考えているイメージとか視聴者へのわかりやすさが優先されていると感じました。脚色やストーリーを描き出すための演出がかなり多く、普通のドキュメンタリーのようにありのままの野生動物の姿を描いているというものではありません。

制作がフランスだったということもあってか、やはりオオカミに対するマイナスなイメージは取れていなかったです。映画の前半、オオカミがウマを狩るシーンがありましたが、ウマを取り囲んだところでオオカミが牙を剥き出して威嚇するような顔をしていました。あんな表情を獲物に向かってするとは思えません。オオカミが牙を剥くのは、相手に向かって引き下がれという合図です。相手を怖がらせて遠ざけようというのです。獲物を怖がらせてどうすんのと思いませんか。自分がハンターだったら、そんなことします??
そしてナレーションでも、人間はオオカミの脅威に怯えていただのかつては敵だったの言っていて、昔はまるで人間は定期的にオオカミの餌食になっていたように聞こえます。人間が餌食になるくらいならイヌは生まれねえよと言いたい。これってやっぱり、ヨーロッパ人にある昔からのオオカミに対する憎悪や偏見が抜け切れていない証拠だと思いますね。

あの映画に出てきたオオカミたちは間違いなく飼いならされたタレントで、調教師の指示に従って行動しているのでしょう。だって、そもそも野生のオオカミはとても警戒心が強いので、あんなに間近で撮影すること自体無理だからです。それに追われていたウマたちは、現代では映像のように野生では暮らしていません。もはや自然界に存在しないウマと警戒心の強いオオカミを、あれだけ間近に好都合に撮影できるなんて、人間の手配がなくては不可能な光景です。あの映像は「昔はこうだったろう」という完全な再現と演出です。どこが「ネイチャードキュメンタリー」だったの?

拭えぬ偏見とそれによる虐殺

「ただの演出にそんな目くじら立てんなよw」と言いたい人もいると思うので、ここで肉食動物への過剰な恐怖が引き起こした、腹立たしい実例を挙げてみます。

アメリカで1990年代にオオカミが再導入され、ある程度数が増えてくると、途端に再導入された州では「もうオオカミの数は回復したから」と判断してオオカミ狩りが許可されました。その結果アイダホ州では1000頭しかいないオオカミのうち約半分が駆除されてしまったそうです。
ノルウェーでは68頭しかいないオオカミの70%を駆除してもいいと国会が許可を出したとのことです。野生のオオカミが70頭未満なのに対してノルウェーの羊は200万頭近くおり、オオカミによる家畜の被害は僅か1.5~3%です。羊の死亡原因のほとんどがオオカミ以外によるものなのに、具体的な家畜管理の対策は取られず、全部オオカミになすりつけられているのです。

これらはいずれも、「オオカミは人間の脅威であり、危険で排除すべき対象である」という思い込みの結果です。実際の被害はどの程度なのか検証せず、正しい生態も理解しようとしないで、昔からの言い伝えにすがっている結果です。都市部は啓蒙が進んでいるのか保護意識が高いようですが、地方へ行くと古い価値観が健在なようです。

【参照】
  • ジム&ジェイミー・ダッチャー著「オオカミたちの隠された生活」
  • 「闇が深いオオカミ議論/68頭のみの野生の70%を射殺へ。ノルウェー国会が許可、波紋を広げる」2016年9月21日 Yahooニュース(http://bylines.news.yahoo.co.jp/abumiasaki/20160921-00062411

本文及びマークアップ修正:2020年1月30日

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